コロナで在宅勤務が広まり、
多くの会議が対面からオンライン開催になり、
Web会議ツールは急激に普及しました。
実際、Zoom Video Communication社(以下、Zoom)の株価は、
2019年の上場当時は約60ドルの株価でしたが、
2020年3月のコロナショック以降は株価が急騰。
一時は最高値で588ドルをつけ、
2年ほどで10倍近い上昇を記録しました。
しかし、コロナ禍でのロックダウンが解除され、
徐々にコロナ前の行動基準に社会が戻ると、
業績の鈍化が嫌気され株価は下落しました。
現在(2023年3月6日時点)では、
71ドルで取引されています。
何故、Zoom株は市場で注目されているのか?
コロナ特需も終焉を迎えつつある中、
尚 Zoom株が注目を集める理由とは何でしょう。
「破壊的イノベーション」をもたらす企業への投資に特化し、高い成長率を実現してきた、
ARK Innovation ETFの採用銘柄だからです。
ARK Innovation ETFの採用銘柄のうち、
占有割合で第2位(1位はテスラ社)、
大きな割合が保有されています。
(本記事執筆時点: 2023年3月6日)
なんと、ARK社のウッドCEOは、
Zoomの「2026年の目標株価を1,500ドル」と
発言しており、その将来性を買っているのです。
事業内容
Zoom社は、Web会議サービスを提供しており、
通常のミーティングであるZoom Meetings
に加えて、
・Zoom Rooms :
会議室や教室などの共有スペースに設置された
ハードウェア、ソフトウェア、およびオーディオ/ビデオ機器から構成される、
高度なビデオ会議システム
・Zoom Events:
会議をオンライン上で開催でき、例えば会場を複数用意して講演を同時並行で行なったり、待機用のロビーを準備するなど、
実際の会議に近づけることが可能
などのサービスが展開されています。
注目のZoom IQ for Salesとは?
中でも注目されているのは、
Zoom IQ for salesというサービスです。
Zoom Meetings 用の会話分析ソフトウェアで、
通話分析とCRMデータを結合、
営業担当またはチームに対してフィードバックを与える機能が提供されています。
例えば、ビデオ会議で商品説明を行う際、
説明方法や順序等の改善点を指摘することが可能です。
生産性向上にも大きく貢献しうる技術であり、
営業担当だけでなく、コールセンター等への導入も期待されます。
財務項目
Zoom社の直近決算内容を見ていきます。
(百万ドル) | 2022年度 | 2021年度 | 変化率 |
売上 | 4,392 | 4,099 | + 7% |
売上総利益 | 3,292 | 3,045 | + 8% |
研究開発費 | 774 | 363 | + 113% |
広告宣伝費 | 1,696 | 1,135 | + 49% |
一般管理費 | 576 | 482 | + 20% |
営業利益 | 245 | 1,981 | – 88% |
研究開発費、広告宣伝費ともに昨年度比で急増。
決算資料上は、「人員増加による株式報酬費用(Stock based compensation)増加のため」と記載されています。
収益状況を見ると昨年度比で悪化していますが、
人員増加による各種費用の増加が大きく、
一概に判断できません。
Zoom社が重要視するKPI
そこで、
Zoom社が重要視するKPIを見ていきましょう。
・法人会員数
・長期優良顧客数
Zoom社は、二つのKPIを掲げています。
長期優良顧客数とは、12ヶ月以上継続して 10万ドル以上の売上を計上した顧客数を指します。
顧客数は昨年度比で + 12 %、
優良顧客数は 27%の増加を達成するなど、
継続的な成長が達成できています。
リモートワークの特需が喪失しかけている中、
長期的に増加し続けるかどうか、
次回以降の決算では注目ポイントと言えます。
株価指標
株価指標となるPER、PBRはそれぞれ 15.7倍、3.67倍(2023年3月6日時点)。
2020年度以降、コロナ特需で株価が急騰していた際には、PERは一時 300倍超をつけるなどバブル状態でしたが、
現時点ではグロース株としては抑えめな指標となっています。
懸念点
2023年2月、大規模レイオフを実施
Zoom社のユアンCEOは、2023年2月7日、
パンデミック中の過剰雇用が原因で、
従業員を約15%減らすことを発表。
人件費削減による営業利益率向上に繋がる一方、
今までの高成長率の維持が厳しいことへの表れとも見られ、次回決算での数値に注目が集まりそうです。
競合の多さ
Google MeetやSkype、Microsoft Teams、、
Web会議サービスを提供する競合他社は
数多存在します。
競合企業の中でもZoomが選択されるよう、
ただのオンライン会議サービスにとどまらず、
AIを活用した効率化が図れるなど、
一定の付加価値をつける必要があります。
顧客数の増加ペース
Web会議サービスを有料で利用したいと思う企業の大半は、
ロックダウンで在宅勤務を推進してきた大企業が中心で、
引き続き出社体制を敷いてきた中小企業の顧客層を思うように広げられていない可能性があります。
ポストパンデミックの時代で、徐々に会議や商談が対面に戻りつつある中、
景気後退に備えて多くの企業がコスト削減を目指しており、
新規契約獲得の難易度が高まりつつあります。
顧客数をどの程度伸ばすことができるか、肝となりそうである。
まとめ
懸念点の項目では先行きの厳しさにも触れましたが、
ARK Innovation ファンドの構成銘柄で占有割合第2位(1位はテスラ)を占めており、
長期的な成長率への期待は一部関係者の間では非常に高い状況です。
ウッド氏は、2026年の目標株価を1,500ドルとしていますし、
昨年12月のインタビューでも引き続きZoomへの期待を表明しています。
とはいえ、昨今の株価の動きは到底上昇基調とは言えず、
成長率に対する懸念が高まっているように思えます。
特に、コロナによる特需の影響が徐々に薄れる中、
顧客数の増加ペースを維持できるかどうか、関心事項と呼べるでしょう。
期待が高まっている状況である故、非常に株価変動リスクの高い銘柄であると言えます。
ある程度上昇トレンドに入った後での購入でも遅くないと思われますので、
一旦は様子見で、株価の推移を見守りたいと思います。