直近の株価指数は好調
1月26日のS&P 500 終値 は 4,060.43 と、年明け以降 6%ほど増加した。
今は2022年第4四半期の決算発表時期でもあるが、Microsoft や IBMといった銘柄では予想よりも低い成長率が明らかになり下落、
一方 Tesla や Netflixのように高い成長率を維持できるとの期待から株価が上昇した銘柄もある。
直近の株価指数を見ていると、「予想を上回る」売上高や成長率が株価に反映され上昇しているが、2023年は全体的に景気後退期に入る、ということは忘れてはいけない(自戒をこめて)。
2023年は景気後退が発生すると言われている
昨年に引き続き高インフレ・高金利が継続する2023年は、実質所得の減少により成長を支えてきた消費が弱まり、景気後退期に入るとの見方が大勢を占める。
以下のグラフは、米国での消費者物価指数
(CPI、前年比) の推移(2022年)を示す。
2022年6月の9.1%をピークとして下がり続けているものの、直近の指標(2022年12月)では6.5%と、引き続き高い水準にある。

そもそも高インフレ率の主な要因は、
・ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源・小麦などコモディティ価格の高騰
・コロナ禍で職を離れた労働者の復帰の動きが鈍く、人手不足が継続。(人件費が高くなる)
これらの理由が独立しているというよりかは、
物価・人件費は循環してさらに高まる方向に向かった結果となっている。
具体的には、
1. 物価上昇により人々の生活は厳しくなる
2. 労働者は企業に賃金を上げるよう要求
3. 賃上げを行った企業は、上げた分の人件費を
商品の価格に上乗せ
の1-3のステップを繰り返し、
物価上昇の循環=スパイラルが起きていく。
景気後退のシグナル(景気先行指数)
景気後退が起こる、というのはある程度共有された見方であるものの、投資家はどのように景気後退の時期を判別することができるのだろうか。
景気の転換点の兆候を捉えるために有名なのは、景気先行指数だろう。
景気先行指数にはいくつか指標があるが、ここでは全米産業審議会(Conference Board)が公表するLeading Economic Index (LEI)を紹介する。
こちらの指数は全て先行指数ではなく、遅行指数も含まれているが、全体的な経済の動向を探る上で非常に参考になる指数である。
LEIには 10個の指標がある。
- 米国週平均労働時間(製造業):
製造業での生産への需要の強さを表す指標。 - 新規失業保険申請件数の週間平均数:
失業者が増加すればその分消費が減るため、景気全体としては後退傾向にあると言える。 - 耐久財の新規注文指標:
自動車や家具、航空機など耐久年数3年以上の消費財の注文状況を示す指標。 - 米国の製造業における新規受注のISM指数:
全米の製造業350社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、
その結果を基に作成する景況感を表す指数。 - 新規受注、航空機発注を除く非国防資本:
企業の設備投資計画の指標とされる。 - 米国住宅建設許可件数:
実際の着工に先駆けて出される許可申請の数を集計したもので、同時に発表される
住宅着工件数の先行指標。
住宅の建設に伴って家具・家電などの耐久消費財が購入されることが多く、
個人消費への波及効果が大きいため、
景気動向の先行指標として市場関係者から
注目される。 - 株価(S&P 500)
- 主要信用指標(Leading credit index)
- 金利スプレッド:
長期金利と短期金利の差を示す。
通常は長期金利が短期金利を上回っている(順イールド)が、景気不安がある場合には短期金利が長期金利を上回る。 - 消費者信頼感指数:
消費者の期待値をアンケートで調査して指数化した景気関連の経済指標。
CCI(Consumer Confidence Index)とも呼ばれる。一般的に個人消費やGDPとの相関性が高く、これらの先行指標として注目されている。
そしてこれらを統合したLEI指数を見ると、
過去の大規模な景気後退(ITバブル、リーマンショック、コロナショック)と同水準で、
景気が後退しつつあることがわかる。

この指数より、いつ景気後退に陥ってもおかしくない状況であることがよく理解できた。
今回の決算ではなくとも、例えば次回決算(2023年第1四半期)での売上や利益が振るわない場合、景気後退に入ったとして株価が大きく売られるシナリオも想定される。
まとめ・感想
正直、今回調べてまとめるまでは、景気先行指数を意識した投資をしておりませんでした。
ただし、全米産業審議会が展開する上記の指数を見ると、リーマンショックやコロナ並みの景気の落ち込みが今後あるのか、と身構えるようになりました。
長期的に売上が伸びそうか、事業内容に独自性があるか、といった点を直近決算や事業内容を基に判断していたのですが、
株価は短期・中期で見れば自社業績以外の景気に影響されると思います。
今のように上昇トレンドにある時には、ついつい株価が伸びているグロース株に手を出したくなるのですが、景気後退のタイミングで仕入れることができるよう、景気先行指数も読み解けるようになりたいです。