蘭の半導体製造装置メーカーASML、2023年の売上見込を公表(前年度比25%程度の増加)。半導体業界の概要を含めて解説!

蘭の半導体製造装置メーカーASML、2023年の売上見込を公表(前年度比25%程度の増加)。半導体業界の概要を含めて解説!経済ニュース

元記事:https://www.cnbc.com/2023/01/25/asml-forecasts-25percent-rise-in-2023-revenue-as-chip-industry-recovers.html

記事の要約

オランダの半導体製造装置メーカー、ASML (Advanced Semiconductor Materials Lithography) は2023年の売上見込みを発表し、2022年よりも25%程度の売上増加を見込むとした。

ASMLは半導体サプライチェーンの中でも非常に重要な存在であり、
半導体露光装置を製造している。

2022年第4四半期の売上高は64億ユーロ、2022年通期での売上高は211億ユーロで、通期での売上高は昨年度を13%程度上回った。一方で、研究開発費が昨年度比で30%程度増加したこともあり、
純利益は昨年度を4-5%下回った。

ピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は、「 ( IntelやTSMCといった)当社の顧客は半導体の需要減による在庫の増加を抱えているものの、下期の市場回復を予想していることを示唆している。
1年半ー2年ほど想定される注文のリードタイム*やリソグラフィー*投資の戦略的性質を踏まえると、当社のシステムの需要は引き続き強い」と指摘した。

ただし、ASMLは米中の半導体戦争に巻き込まれる形となっており、注意が必要だ。
高度な半導体は軍事にも転用されることから、米国としては中国の半導体の技術開発を食い止めたいと考え、半導体装置輸出規制を課している背景があるためだ。
これは一企業を超越して政治的な分野であるため、ロビイング活動も行われていると見られている。
先月オランダのルッテ首相が米国のバイデン大統領を訪問しており、
ダボス会議においても「ここ数ヶ月で妥協点を探ることができると考えている」と発言した。

現在、最新鋭のDUV露光装置は中国に販売可能だが、EUV露光装置は販売できなくなっている。
2022年の売上のうち、中国が15%と決して少なくない割合を占めるだけに、
今後のオランダ政府とアメリカ政府による会談や、政治的な判断が気になるところである。

*リードタイム:商品・サービスを発注してから納品されるまでの時間や日数
*リソグラフィー:光を利用してシリコンウェーハ上に回路パターンを転写すること

半導体産業の構造、日本のプレイヤーについて

半導体製造においては大きく分けてウェーハメーカー、半導体デバイスメーカー、半導体製造装置メーカーが存在する。

ウェーハメーカーとは、半導体の材料となるシリコンウェーハを製造している会社のことだ。
シリコンウェーハは、半導体デバイスの“土台”となっている部分で、
ウェーハメーカーは製造したシリコンウェーハを半導体デバイスメーカーに販売している。
信越化学工業、SUMCOの日本企業2社が世界でも有数のシェアを誇る。

半導体製造装置メーカーは、半導体デバイスを製造するために必要な“装置を製造する会社”のことだ。
半導体の加工には非常に精度の高い技術が必要で、専用の加工装置が必要となる。
今回話題となったASML、東京エレクトロン、ディスコなどといった会社が該当すr。

半導体デバイスメーカーとは、“半導体デバイスそのもの”を製造する会社を指す。
デバイスメーカーもさらに、IDM、ファブレス企業、ファウンドリ企業に分けることが可能。

IDM (Integrated Device Manufacturer) とは垂直統合型メーカー のことで、
開発から設計、製造、販売までを一貫して自社のビジネスとして行っている企業のことである。
Intelやサムスン電子、また日本の大企業で言えばキオクシア、
ルネサス エレクトロニクスが分類される。

ファブレス企業とは、工場を持たない企業のことで、
設計や販売のみを行い、自社で製造の機能を持たない企業を言う。
ファブレス企業の例としてはQualcomm、Broadcom、NVIDIAなどがある。

ファウンドリ企業とは、ファブレス企業の逆で製造の機能に特化した企業のこと。
ファブレス企業(または一部のIDM)に製品を納品することで利益を得ている。
ファウンドリ企業の例としてはTSMCが挙げられる。

日本にファブレス・ファウンドリ企業が存在しない理由として一般的に言われるのは、
半導体業界では技術革新が常に進み製品開発への投資が必須、莫大な資本投下が求められ、
大手企業でそのリスクをとってまで参入しようとする企業がなかったとする説である。

感想・まとめ

半導体の製造量は、景気に大きく左右されると言われる。好景気の時にはパソコンや自動車などが多く製造されるため半導体の需要が大きく、景気悪化の際には逆に製造量が減るために需要が減少する。
今後、高度な人工知能の開発、メタバースといった仮想空間の設計、web3の維持必要なブロックチェーン技術を支えるには、高速な計算機能を有するPCが大量に必要となる。
また自動運転が標準化される社会がそう遠くない中で、自動車も大きなソフトウェアとして、
多くの半導体を必要とする時代が迫ってきている。

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