米ネバダ州でリチウム鉱床の開発を手掛ける豪企業 Ioneerは、
米政府と7億ドルのコミットメントを締結したと公表した。
Ioneerによる資金調達や事業許可の取得次第ではあるが、
2025年に供給を開始予定であり、年間21,000トンの炭酸リチウム(EV 40万台分)を供給できる見通し。
(尚、市場では炭酸リチウムにて売買されているが、
約5.3トンの炭酸リチウムにつき1トンのリチウムが取れると言われている)
この鉱床で開発したリチウムの一部は、Ford社、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES、トヨタ自動車とパナソニックが共同出資する電池会社)に供給することで合意されている。Ioneerは5年にわたり、Ford社に年間7,000トン、PPES社に年間4,000トンの炭酸リチウムを供給する。
米国内にはリチウム資源が存在するものの、リチウムの採掘には多大なコストがかかるほか、
環境問題への配慮も必要となるため、新規プロジェクトを推進することは容易ではない。
また、鉱山に含まれるリチウムの密度がチリ等の他国で生産するより低く、
採掘するコストの高さもあり、他国からの輸入に頼っていた。
現在、アメリカではネバダ州のSilver Peak鉱山が稼働しており、年間約6,000トンを生産している。
(尚、世界のリチウム生産大国は生産量順にオーストラリア、チリ、中国、アルゼンチンとなっている。オーストラリアは年間50,000トンを生産、その8割を中国に輸出)
米国ではEVにまつわる様々な規制や法案が成立しており、EVへの移行を後押ししている。
カリフォルニア州、ニューヨーク州では、州内で販売される全ての乗用車の新車につき、
2035年までにEVなど走行中に排気ガスを出さないゼロエミッション車とすることを義務付けた。
また、気候変動対策としてEVの普及を目的とした税控除 (Tax Credit)の適用を拡大しているが、
バッテリーに使われるリチウムなどの重要鉱物(リチウムなど)を、
国内あるいは自由貿易協定を結んだ国から調達する義務が伴う。
現在、EVのバッテリーに使われているリチウムイオン電池の殆どは中国製であり、
米国製は7%弱である。
原材料の採掘からバッテリー製造までのサプライチェーン構築が求められる状況で、
原料となる貴金属の確保に各国は動いている。
(参考)
フォード、PPESのリチウム調達:https://www.mining.com/ioneers-lithium-boron-project-in-nevada-moves-into-final-permitting-stage/
https://www.technologyreview.jp/s/282350/ev-tax-credits-could-stall-out-on-lack-of-us-battery-supply/
世界各国のリチウム生産量(2022): https://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2022/mcs2022-lithium.pdf