スウェーデンの国有鉱業会社LKABは、レアアース酸化物の埋蔵100万トン超を確認したと公表した。
レアアースの99%を中国からの輸入に頼る欧州にとっては朗報だが、
経済的合理性を確かめるための追加での採掘調査に数年、
商業生産に当たっての採掘への許認可取得等を踏まえると10-15年はかかるとも言われており、
資源採掘のタイムスパンの長さ、難易度の高さが表れている。
レアアースは電気自動車(EV)や風力発電用タービン、携帯電子製品やマイク、
スピーカーなどに用いられており、工業的にも非常に重要な金属である。
レアアースは重希土類、軽希土類と分かれているが、軽希土類は世界中で採掘が可能なのに対して、
重希土類については中国が全世界の埋蔵量の約40%、生産が90%と占めている、
非常に偏在性の高い資源となっている。
(将来的な需要)EUの調査レポートによれば、
EVや蓄電池に用いられているコバルト、
リチウムは「(現状の供給量比で)リチウムは2030年には約18倍、2050年には約60倍、コバルトは2030年には約5倍、2050年には15倍」の量が必要になってくるという。
また、永久磁石等にも使われるレアアースの量は2050年には10倍にも膨らむ可能性があるとのこ
(現在の輸入量)では、現在のEUのレアアースの輸入量はどの程度なのだろうか。
ロイター通信の記事では、16,000トンを毎年中国から輸入していると記載されている(数字が直感的にRare Earth Oxide: レアアース酸化物 と Rare Earth: レアアース金属)の違い?)。
参考までに、アメリカは2019年度に7,700トンものレアアースを輸入、
内訳として中国から8割程度を輸入しているとのこと。
欧州と比較して、自国でのサプライチェーン構築を行っているためか、
輸入依存度は低いと言える(2022年度_アメリカでのレアアースに関するデータ)。
(欧州領域内での生産過程構築)レアアースは採掘してそのまま使用できるのではなく、
抽出・精製を行い純度を高める必要がある。
この抽出・生成の過程において、中国は技術的・規模的にサプライチェーンを整えており、
採掘されたレアアースを工業的用途である磁石に生成することができている。
欧州内にもサプライチェーンがないわけではない。
EU唯一のレアアース分離施設はエストニアに所在しているほか、
磁石製造企業がドイツを始めとした国々に所在している。
ただし、ある調査では、欧州内で製造した磁石は中国産と比較して 20-30%ほど価格が高いという。
(今後)製造業の基幹ともなる金属の調達をほぼ輸入に頼っている現状を打破すべく、
EU領域ではEuropean Rare Metal Alliance (ERMA)なる連合が、領域内での採掘から磁石製造までの過程を含めたサプライチェーン構築に17億ユーロもの資金を投資するとの方針を公表している(ロイターの記事)。
具体的には、それぞれの過程で以下の国々でのプロジェクトが予定されているという。
継続的な投資により、500トンの生産力を2030年までに7,000トンまでに引き上げ、欧州内の2割ほどの需要を満たしたい、という算段だ。
採掘(フィンランド、ノルウェー、スウェーデン)、分離(ポーランド)、精製(エストニア)、リサイクル(ベルギー、フランス)、磁石製造(ドイツ、スロベニア)
(参考)アメリカでも、レアアース(希土類)磁石の一貫生産に乗り出すため政権が企業を資金支援しており、
例えば米国内でレアアースを採掘する米MPマテリアルズがカリフォルニアの同社拠点で重希土類を分離・精製できるようにするため、
国防総省が3500万ドル(約40億円)を支援するなど、先行して動いており、非常に興味深い。
(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN222ED0S2A220C2000000/)