原油の基礎 – 原油価格の推移、生産国・輸入国、取引形態とは?

原油の基礎 - 原油価格の推移、生産国・輸入国、取引形態とは?投資

原油は、世界中で最も重要なエネルギー源の一つであり、石油製品は交通機関、発電所、工場などの様々な用途で使用されています。

原油価格の変動は、景気・為替などに多大な作用を及ぼします。

  • 景気への影響:

    エネルギー価格上昇により、
    製造・サービス提供を行う企業の業績に大きな影響を及ぼします。

    また、エネルギー価格が家計に占める割合が増え、一般家庭の消費が落ち込み、
    経済成長の停滞
    につながります。
  • 為替への影響:

    原油輸出国は、原油価格の上昇によって輸出収入が増加し、国内通貨の価値が上昇することがあります。

    一方、原油輸入国は、原油価格の上昇によって輸入コストが増加し、国内通貨の価値が低下することがあります。

従って、原油の価格変動には注意が必要です。
原油価格とは、他の製品同様、
需給の関係で決まります。

そのため、原油を必要とする国(需要)はどこにどれだけあるのか、原油生産国(供給)はどこで、どの程度生産しているのか、
理解しておく必要があります。

この記事では、原油を理解する上で基本的な項目をまとめておりますので、原油価格の変動の理解に役立ててもらえれば幸いです。

そもそも原油とは?石油との違いは?

簡単にいうと、「石油」は総称、
「原油」は地中から採取した状態を指します。

石油の成り立ちには諸説ありますが、
現在の石油・天然ガス開発技術のベースとなっている説を紹介します。

太古の昔、水中のプランクトンの死骸などが土砂と共に浅い海や湖に堆積、微生物によってケロジェンという有機物に変化しました。

そのケロジェンの上にさらに泥や砂が積もり、化学反応が進みます。

地熱によって長い時間をかけて分解され、

液状状のもの→石油、
気体状のもの→天然ガス

になったと考えられています。

原油価格の推移

過去、様々な経済イベントを機に石油価格は上下してきました。

中でも値動きの大きかったのは、
リーマンショック、アラブの春、シェールオイルの増産でしょう。

リーマンショックにより経済見通しが悪化し、原油価格は急下落。

アラブの春とは、2011年初頭から中東地域の各国で本格化した一連の民主化運動のことで、
政治の混乱が世界のエネルギー供給に対する先行きの不安を煽り、原油価格は急上昇。

シェールオイルとは、簡単にいうと、
従来は開発が難しかった岩層から抽出された石油・天然ガスのことです。
これにより生産可能量が増大し、需給のバランスから価格が下落しました。

原油生産国はどこ?

中学や高校の社会での授業で学んだ方は、
原油生産量世界一はサウジアラビア、ロシアではないか、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、2017年までの世界の二大産油国はサウジアラビア、ロシアでしたが、
シェールオイルの開発により、
アメリカが世界最大の原油産出国になりました。

順位国名生産量(1,000バレル / 日量)(2020年)
1.アメリカ合衆国16,476
2.サウジアラビア11,039
3.ロシア10,667
4.カナダ5,135
5.イラク4,114
6.中国3,901
7.アラブ首長国連邦3,657
8.イラン3,084
9.ブラジル3,026
10.クウェート2,686
BP 2020 レポートより参照

石油輸出国機構(OPEC)とは?

ニュースを聞いていると、OPECという言葉をお聞きになったかもしれません。
OPECとは、石油輸出国機構(Organization of the Petroleum Exporting Countries)のことで、産油国が欧米の国際石油資本(メジャー)に対抗するために組織した国際機関です。

サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、ベネズエラの5カ国で1960年に設立され、
現在は中東やアフリカ、南米の14カ国が加盟しています。

原油価格の決定力(OPEC vs 米国)

OPECは、過去は生産調整などにより原油価格に大きな影響を及ぼす存在でした。
二度起きたオイルショックなどが有名な例です。

今は、米国のシェールオイル開発などもあり、
OPECの価格決定力は相対的に低下したと言われていました。

ところが、コロナ発生以降は、

・新型コロナ禍による原油需要の減少
・脱炭素の高まりでシェール産業の中長期的な成長性に疑問を抱く投資家が増加

など、米国でのシェールオイル開発に逆風が吹く格好となりました。

米国のシェール開発企業は設備投資を抑制しながら、株価対策で配当と自社株買いの拡大を迫られ、以前ほど増産余力がないようです

OPECの支配力が高まった現状は、
原油の供給や価格が市場原理よりも、
産油国の懐事情により左右されやすくなっていることを意味します。

そのため、今は特にOPECの生産方針に原油価格が大きく左右される状況が続くので、注意が必要です。

ただ、中長期的には、
シェールオイルの生産力も回復する想定のため、
その時々で価格の決定力をどこが握っているか、
把握することが大事になりそうです。

原油埋蔵量が多い国は?

次に、原油の埋蔵量が多い国について紹介していきます。

埋蔵量が多い国は、

第1位:ベネズエラ
第2位:サウジアラビア
第3位:カナダ

の順となっています。

ベネズエラの1位は意外に思われるかもしれないが、世界のおよそ17.5%を占めています。

オリノコ川流域の地中に重質油が眠っているとされ、資源に富んだ国となっています。

ただ、政治の混乱により、資金・技術が恒常的に不足している状況で、
埋蔵量が多いことがわかっていても、
十分な生産体制が構築できていないのが現状です。

原油輸入国はどこ?

世界最大の原油輸入国は、長らくアメリカ、日本が占めてきました。
ところが、中国の急速な経済発展に伴い、原油消費量も急増、現在では中国が世界第一位の輸入国となっています。

順位国名輸入相当量(1,000バレル / 日量)(2020年)
1.中国10,852
2.アメリカ合衆国5,877
3.インド4,033
4.韓国2,660
5.日本2,472
The World Factbook のデータ参照

原油の取引形態は?

日本は、安定的調達を優先し、長期取引で原油需要の大半を賄っており、
不足分はスポット市場で調達しています。

スポット市場とは、油やガス、石油製品、電力などを随時に取引する市場を指します。
その時々の環境や需給を勘案しながら、売り手と買い手が相対で値決めする仕組みです。

原油需要が逼迫する際には、スポット市場にて原油を調達するため、
スポット市場での原油価格には注意を払うべきと言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

この記事では、原油価格の推移や、原油生産国・埋蔵国・輸入国について整理し、
原油の取引形態についても簡単に触れました。

脱炭素に向けた取り組みが高まりつつある現代でも、引き続き原油は工業にとって不可欠であり続けるでしょう。

経済を支える商品である原油について、
少しでも理解が深まったなら幸いです。

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