本書は、サッカー日本代表としてワールドカップ3大会に出場し、
日本代表のキャプテンも務めた長谷部誠選手が、
常に安定した力と結果を出すために日々実践する、メンタルコントロール術を紹介しています。
私は学生時代にサッカーをしていたので、書かれた状況が理解しやすい面はありましたが、
スポーツをやったことのない方、ビジネスマン・社会人の方々にとっても役立つ内容です。
長谷部選手は、決して派手なプレーをする選手ではないです。
例えば、現在日本サッカー界で話題沸騰中の三笘薫選手のような切り裂くドリブルや、
久保建英選手のような突出したテクニックなどを持っているわけではありません。
(もちろん、非常に上手い選手であることは間違い無いです!)
それでも、プロ入り後に所属した浦和レッズでは主力として国内外の主要タイトルを獲得し、
2008年に海外移籍したドイツではリーグ優勝も経験しました。
本記事執筆時点では39歳の長谷部選手ですが、
今もドイツでプレーしており、
なんと15年以上海外でプレーしています。
海外のトップリーグでプレーするとは、
競争が非常に激しく、活躍できなければすぐに代役にポジションを奪われる、
非常に厳しい環境に身を置くことを意味します。
そんな環境で15年以上プレーし続けられるとは、
・安定したパフォーマンスを発揮できる力
・日々の練習に対する姿勢
・今も燃え尽きることのない向上心など
技術面だけでなくメンタルでも卓越しているからこそ、どんなチーム・監督でも評価され、起用され続けているのだと思います。
そしてメンタル面の心構えや取り組み方は、
私たちも十分に参考にできる部分が多いです。
私が中学生の頃にこの書籍が出版され、サッカーをしていた私はこの本を読みました。
当時は「ドイツでも活躍できる長谷部選手はすごい」程度の感想しか持たなかったのが、
人生経験を積み、社会人として働くことの大変さ、難しさを知ったからこそ、
より考えさせる内容だったなと思います。
本記事では、20代社会人として共感し、参考にしたいと思ったフレーズを紹介します。
心を整える、その核心とは
本の冒頭に、「心を整える」ことへの長谷部選手の考え、実践方法の核心が書いてありました。
メンタルを強くするのではなく、日々の生活で心の調子を把握し、必要に応じて調整する、と言う感覚なんですね。
僕にとっての「心」は、車で言うところの「エンジン」であり、ピアノで言うところの「弦」であり、テニスで言うところの「ガット」なのです。??? という感じかもしれませんが、「メンタルを強くする」と言うよりも、「調整する」「調律する」と言った方が適している感覚です。
「心を整える」より引用
つまりは「心をメンテナンスする」「心を整える」ということ。僕はそれを常に意識して生活しています。常に安定した心を備えることによって、どんな試合でも一定以上のパフォーマンスができますし、自分を見失わなくてすみます。
「心を整える」より引用
意識して心を鎮める時間を作る
部屋に戻る。電気をつけたままにして、ベッドに横になる。音楽もテレビも消す。そして、目を開けたまま、天井を見つめるようにして、息を整えながら全身の力を抜いていく。
「心を整える」より引用
壁の模様をみてぼーっとするもよし、頭に浮かんできたことについて思考を巡らすのも良い。
こうすることで、緊張してざらざらした心を少しずつ鎮静化され、毎日を平常心で送るために必要な習慣だという
24時間息つく暇がまったくないのです。そして、そういう日々に慣れてしまうと、ちょっと間ができたら、逆に落ち着かなくなって、何をしたらいいのか分からなくなってしまうのです。
日々そうやって過ぎ去っていくと、自分を見つめる時間もないですし、心が荒んでいく一方なのではないかと僕は思います。
「心を整える」より引用
日々仕事をしていると緊張の連続で、気にしなくても良いことを引きずっていたりしますよね。
心には沢山の負債が溜まった状態かと思います。
個人的にはブログ執筆もそう感じることがあります。30分ごとにPV数を気にしたり、発信用のTwitterを見てしまったり笑。
この本を読んで以降、毎日寝る前に実践しているのですが、モヤモヤしていることや、頭の疲れからある程度解放され、
かなり楽になった感覚がありました!
何も特別な技術を必要とする方法では無いので、皆様にもおすすめです。
過度な自意識は必要ない。
淡々と好プレーを続け、安定したパフォーマンスを見せる長谷部選手も、
プロ当初やドイツに移籍したての頃は、重圧や緊張を感じると胃薬のお世話になっていたという。
「うまく馴染めるか」「練習についていけるか」などの不安が原因でした。
ドイツでプレーし始めてから数年後には克服できたということですが、
優勝を経験したことで自信がついた、読書に力を入れ始めたことなどの蓄積があったためだと。
その中でも大きかったのは、鈍感になれたことと書かれています。
ドイツに来てしばらくすると、周囲の人は自分が意識しているよりもはるかに、僕のことを見ていないことに気がづいた。簡単に言えば他人に関心がないのだ。
日本にいるとき、僕は周りの目をすごく気にしていたところがあって、
「心を整える」より引用
もしかしたらそれが小さなストレスとなって、日々蓄積されていたのかもしれない。
私たちも日々生活を送る上で、周りの目を気にしすぎて疲れてしまうことはありますよね。
劣等感を感じることがあれば、自分だけが感じている感情であり、
周りの人や世間はそんなに気にしていないこと、心がけるようにしたいですね。
マイナス発言は自分を後退させる
愚痴というのは一時的な感情の捌け口となって、ストレス解消にはなるが、
何も生み出さないし、解決策にもならない。
負の言葉は全て、現状を捉える力を鈍らせてしまい、自分で自分の心を乱してしまう。
愚痴というのは一時的な感情の捌け口になって、ストレス解消になるのかもしれないけど、
あまりにも安易な解決策だ。(中略)逆に愚痴を言わないように心がければ、自ずと問題点と向き合えるようになるのだ。
(中略)
「心を整える」より引用
愚痴だけでなく、負の言葉はすべて、現状を捉える力を鈍らせてしいまい、
自分で自分の心を乱してしまう。
本当に身に染みる言葉です。
僕自身、あまりポジティブ思考の人間ではなく、
辛い時には塞ぎ込んでしまったり、マイナスの言葉を発してしまいます。
ただ、その行為によって脳が思考停止状態になり、心が乱れてしまい、結果として解決がさらに難しくなってしまう、ということですよね。
大変な時こそ、感情に脳が支配されて思考停止にならないよう、
冒頭に述べたリラックス方法で心を整理することが大事なんですね。
常にフラットな目線を持つ
「上から目線」というのは、人と付き合う上で、絶対にプラスにはならない。
偉そうにしたり、知識を見せびらかしたり、自分を実際以上に大きく見せようとしたりすると相手は不快な思いをする。(中略)「下から目線」になってもダメだ。
「心を整える」より引用
相手に媚を売ったり、ゴマをすったり、
下手に出るのは自分自身を貶めることになってしまう。(中略)
コミュニケーションにおいては、どちらも対等な関係であるべきだ。
コミュニケーションがどちらかというと得意な方ではない私は、
目上の人や役職持ちの人に対して、ついつい必要以上に気を使って、
嫌われないようにとか、下手に出てしまうことが良くあります。
また、嫌われたくないから、上手く伝わらなかったらどうしようと言う理由で、必要以上に下手に出てしまっていると気づきました。
「コミュニケーションにおいては、どちらも対等な関係であるべき」という目線をもとに、
適度な自信を持って挑みたいです。
まとめ
まだまだ抜粋したい箇所はあったのですが、あまりにも長くなってしまいますし、
心の整え方と言うよりは選手として進化するために心がけていたことも含まれますので、
一旦ここまでとさせていただきます。
2011年に書かれた本ですが、10年以上経過しても陳腐化しない内容です。
自分自身の内なる弱さを認めつつも、それに向き合って乗り越えてきた長谷部選手の真面目さ、努力する姿勢、向上心の強さが素晴らしいです。
以前読まれたことのある方にも、再読をお勧めしたいです。
人生経験を積んだからこそ、新たに経験する悩みや行き詰まりに対して、
処方箋のような形で長谷部選手の考えが染み渡ります。