景気動向を反映する非農業部門の就業者数新規雇用者数は51.7万人と、
事前予測の主流は10万人台のところ、
大幅に上回る結果となりました。
雇用者数の指標が何故驚きをもって報じられている?
利上げによる影響はセオリー通りであれば、
新規雇用数も収まるのが一般的な見方です。
個人、企業で言うならば、
(個人)
・金利上昇で人々は預貯金にお金を回す
・モノやサービスへの購買意欲が減退
・その結果、モノが売れにくくなり、企業の売上が減少。
(企業)
・金利上昇により企業は借入を減少させる
・企業は設備投資を控え、経済活動が抑制され、
結果として売上が減少。
・従業員の給料を抑えるなど個人消費も減少
上記要因で経済活動が停滞し、
企業の売上が減少、売上規模に見合った組織体制構築のために新規雇用者の絞り込みを行う。
景気が後退している指標として、
新規雇用者の減少が指標に現れる、
流れになるはずでした。
ところが、FRBの急ピッチの利上げにもかかわらず、米労働市場は想定ほど失速しておらず、
インフレ圧力も容易には緩まない可能性を示唆しました。
雇用統計(新規雇用者数、平均時給、失業率)の詳細
新規雇用者数のセクター毎内訳では、
製造業、情報・ITセクターの雇用数は前月並みでしたが、サービス産業の雇用の強さが目立ちました。
従い、全体的には落ち着きつつあるものの、
サービス産業の景気はまだ持続しており、
物価上昇もまだまだ見込まれるということでしょう。
1月の失業率は3.4%と前の月から0.1ポイント改善し、1969年以来およそ53年ぶりの低水準となりました。
また平均時給は前年比4.4%上昇、
米労働市場が市場予想よりもはるかに強いことを示す内容となりました。
指標発表後の市場の反応、及び今後の展望は?
平均時給が前月比0.3%上昇と前月の0.4%から伸びが鈍化したことを評価する動きがあるためか、
翌日の株式市場の下げ幅は限定的でした。
米債券市場では、5%のターミナルレート予想からさらに利上げを市場は想定したのか、
4.1%台まで下落していた2年債利回りが4.2%台半ばまで上昇。
10年債は3.4%台から3.5%を突破しました。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は、「驚異的に強い雇用統計のために、リセッション不安とこの春にも利上げサイクルが終了するとの見方は実に疑わしくなった」とリポートで指摘しました。
一方、ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏は、「出来過ぎのように見えるとしたら、その理由は増加のほとんどが季節要因によるものだからだ。(中略)
FOMCは政策決定においてこの統計を重視し過ぎることはしないだろう」と述べています。
市場参加者の中でもこのように雇用統計の見方が異なっており、総じて指標発表翌日は株式市場に大きな変動はありませんでした。
ただ、これはあくまで初期反応であり、
引き続きインフレと景気減速の度合いをにらみ、一進一退となる可能性が高いとみられます。
ハイテク株はしばらく長期金利の動向に左右される展開が予想されるでしょう。